『医学原論 (下)』―学問としての医学体系

瀬江千史 著

本書は「医学原論」完成と直接に「医学体系」の真の姿を提示した、21世紀の画期的な著作である。著者、瀨江千史は、医学をヴィッセンシャフト化したいと希求し、学究生活を始めるに当たり、「ヘーゲル哲学」を基盤に置いた。
特に『精神現象学』中の序論に研究方法を学ぶことにより、医学体系の一般論を定立する。
爾来、その一般論を元に40年の研鑽を重ねての実果である。
以上は、ヘーゲル哲学に学ぶことなしには成し難かったことである。理由は以下である。
いかなる学問分野もヘーゲル哲学を基盤にしてこそ、それもヘーゲル哲学史の大道(主要路)、すなわち古代ギリシャ哲学からスコラ哲学を経てのゲルマン哲学への発展史、及びヘーゲル哲学と表裏一体となって発展できた学的弁証法・認識論・論理学の一体的・体系化的修学が必須だからである。
当然に、これは医学分野も例外ではなかったのである。
(南鄕継正 日本弁証法論理学研究会主宰)

【下巻】
■ 第1版/2023年/四六判/384頁/
■定価 3,800円 (税別)/ISBN 978-4-87474-201-3

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目次

●まえがき

●序の編 学問としての医学体系とは何か

第一章 医学体系とは何か
第一節 医学体系とは何か
第二節 医学体系はなぜ必要か

第二章 『医学原論(上巻)』の要旨
第一節 医学体系は論理の大系である
第二節 学問体系構築に必要な研鑽過程
第三節 医学体系の本質論・構造論・現象論

●第一編 医学体系の構造論としての治療論

第一章 治療論は医学体系の構造論の一つである
第一節 病態論・治療論・常態論の関係
第二節 病態論と治療論の過程的構造
第三節 医学体系の表象像を提示する

第二章 治療論の構造を説く
第一節 治療論の一般論を措定する
第二節 治療論の構造論の構築過程

第三章 治療論の構造論構築過程を事例で説く
第一節 治療の事実を提示する
第二節 事実の論理構造に分け入るとは
第三節 事例の事実の論理構造に分け入る
第四節 事実の事実的構造と論理構造の違い

第四章 治療論は病態論が基盤となる
第一節 治療論の構造論は病態論に規定される
第二節 病態論の表象像から事例を説く
第三節 生命体の自然的外界との相互浸透の必然性
第四節 人間の自然的外界との相互浸透の必然性
第五節 ウイルスは生命体と自然的外界との相互浸透を媒介する
第六節 人間の哺乳類としての自然的外界との相互浸透
第七節 人間の認識による自然的外界との相互浸透
第八節 人間と社会的外界との相互浸透
第九節 常態論・病態論・治療論の連関

第五章 治療論の構造論には二重構造がある
第一節 治療論の一般論
第二節 治療と看護の区別と連関を問う
第三節 治療論の構造論としての「一般的治療論」
第四節 「特殊的治療論」の構築過程
第五節 「特殊的治療論」の構造は病態の構造に規定される
第六節 病気は機能の歪みから実体の歪みへと発展する
第七節 病気の発展過程には特殊性・個別性がある

第六章 治療論の構造論を事例で説く①
第一節 治療論の構造論を考える
第二節 「一般的治療論」と「特殊的治療論」の構造
第三節 生理構造の機能が歪みかけたインフルエンザの治療
第四節 生理構造の機能が歪んでしまったインフルエンザの治療

第七章 治療論の構造論を事例で説く②
第一節 一般的治療論に特殊的治療論を重ねる
第二節 生命体は恒常性を維持することで健康を保つことができる
第三節 人間は認識(像)によって恒常性を維持する仕組みが歪む
第四節 糖尿病の事例を使って治療の重層構造を説く
第五節 機能として歪みかけている糖尿病を回復させる治療
第六節 機能として歪んでしまった糖尿病を回復させる治療
第七節 実体として歪みかけている糖尿病を回復させる治療

第八章 治療を導く理論としての治療論
第一節 医療現場における診断と治療の現状
第二節 AI(人工知能)診断の是非を問う
第三節 AI診断を取り入れることの落とし穴
第四節 治療は病気に至る過程をも考慮しなければならない
第五節 治療の方針には理論としての「治療論」が必要である
第六節 治療論は病態論をふまえて筋を通さなければならない
第七節 構造論構築に必須の学問的論理能力とは

●第二編 医学体系の構造論としての病態論

第一章 医学体系の一般論措定から病態論に至る過程
第一節 治療論の構築過程を振り返る
第二節 医学体系の一般論措定を振り返る
第三節 病態論の基礎となる常態論の構築過程
第四節 病態論に向けて患者の生理構造を把握する
第五節 病態論に向けてなぜ生理構造が歪んだのかを把握する
第六節 病態論の現象論を提示する

第二章 病態論の構造論を形成する二つの構造の論理
第一節 病気の全過程を「医学体系の全体像」から説く
第二節 病態論で重要なのは病気への必然性の解明である
第三節 病態論の一般論と現象論
第四節 病態論の構造論の二つの構造の論理
第五節 一般性の論理と現象の論理をつなぐ構造の論理

第三章 病態論の構造論の「(狭義の)構造の論理」を説く
第一節 人間の身体の構造化への過程
第二節 人間の身体の構造化はなぜ必要か
第三節 生理構造の歪みは全体との連関の中で理解しなければならない
第四節 代謝系の歪みと運動(感覚)系、統括系との連関
第五節 運動(感覚)系の歪みと代謝系、統括系との連関
第六節 統括系の歪みと代謝系、運動(感覚)系との連関

第四章 病態論の構造論の過程的構造の論理を説く
第一節 病気は生成発展するものである
第二節 病気の生成発展の構造に分け入る
第三節 病気の重層的過程性を考えさせられた事例
第四節 事実に基づいた理論は実践を導くことができる

第五章 病態論を駆使してアルツハイマー病を解く
第一節 体系化された病態論によって病気の解明が可能となる
第二節 アルツハイマー病を提示する
第三節 アルツハイマー病はいかなる生理構造の歪みか
第四節 アルツハイマー病解明のための認識論の基礎を説く
第五節 人間の認識(像)は外界の反映と内界の反映の合成像である
第六節 脳が描いた認識(像)は脳に定着し内界の認識(像)として蓄積していく
第七節 人間は教育によって社会生活に必要な内界の認識(像)を蓄積していく
第八節 認知症による物忘れは老化によるものと違うのか
第九節 人間が老化によって認識(像)の実力が低下するのはなぜか
①感覚器官の実力の低下が認識(像)の実力を低下させる
②外界への問いかけが希薄になると認識(像)の実力は低下する
③形成した認識(像)を定着させる努力をしないと認識(像)の実力は低下する
④認識(像)の整合性をつけていく努力をしないと認識(像)の実力は低下する
第十節 アルツハイマー病を解くために必要なもう一つの理論 316
第十一節 統括器官としての脳の実力は代謝器官の実力に規定される
第十二節 統括器官としての脳のは運動器官の実力に規定される
第十三節 アルツハイマー病は理論があって初めて解明できる

●終の編 医学原論を終えるにあたって

第一章 医学原論への道
第一節 医学体系の一般論を措定する
第二節 一般論から事実を解くことの習学
第三節 看護学体系から体系の像を膨らませる
第四節 常態論構築過程で論理化・理論化を修学する
第五節 医学体系に基づく医学教育を考える

第二章 医学原論からの道
第一節 医学体系という城を築く
第二節 医学原論からの課題

あとがき

引用文献・参考文献

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