『“夢”哲学 原論[綱要]』ー人が見る夢の世界、その精神・身体原理[講義]ヘーゲル・ヤスパースにー

南鄕 継正 著

■ 第1版/2023年/288頁/定価 3,200円 (税別)
■ 四六判/ISBN 978-4-87474-197-9

本書は、夢に関わる問題を、人類の原点に立ち戻って解明した、学問〔Wissenschaft〕的には初の画期的な著作であり、かつ、学問〔Wissenschaft〕的な原理・原論のレベルでの、初の哲学的講義である。
端的に説けば、「夢の問題」は古く、かつ新鮮であるといってよいであろう。
「古く」とは、精神病理では解決が困難であるゆえ、未だに医師を悩ませ続けてきているからである。
「新鮮」とは、それが学問〔Wissenschaft〕的レベルで問われたことが一度もないからである。
すなわち、その問題を個別的・技能的に問う人はいる。
だが、学問〔Wissenschaft〕的原理・原論としては、学的世界の誰も問うたことはない。
著者、南鄕継正は、ヘーゲル『精神現象学』、ヤスパース『精神病理学総論』の実質を究め、以上の 2 著作の事実的・学問〔Wissenschaft〕的欠陥を乗り越えたといえる。
その実際が、本書に「講義」として見事に展開されている。

目次

まえがき 5
序 論 「 “夢” 哲学」とは何か 21
第一節 夢は哲学(ヘーゲル・ヤスパース)レベルで学んでこそ実態が明白になる 21
第二節 夢の問題は私達人間の認識の生生・生成発展を大本にしてこそ解明できる 29
第三節 私達人間が夢を見る原点は端的には社会関係での頭脳的労働にある 31
第四節  『 〝夢?哲学原論〔綱要〕 』目次の解読 38
第一編 哲学的に説く「夢とは何か」 53
第一章 夢の哲学的な解明に必須の過程を説く 54
第一節 観念論哲学の立場では夢の学的解明は不可能である 54
第二節 夢の問題を説くには人類に至るまでの脳の唯物論哲学での解明が必須である 56
第三節  「生命の歴史」から説く私達人間の認識への発展過程 60
第四節 私達人間の認識(映像)は外界の反映と相対的独立に発展する 65
第五節 脳は神経を介して労働と睡眠の異なった総括・統括をしている 68
第二章 哲学的でない夢の専門家の実力を説く 74
第一節 夢に関する専門家の見解を問う 74

第二節 人類の歴史的な文化を学ぶことなしに夢の問題は解けない 76
第三節 夢の問題の解明は夢を描かされる脳の過程的構造から出立すべきである 80
第三章 夢に関わる私達人間の脳の総括・統括の過程的構造を説く 85
第一節 私達人間の脳の総括・統括は四重構造の性質を把持する 85
第二節 労働の過程的構造に夢の問題を解く伴がある 90
第二編 哲学的認識論から説く「夢とは何か」 95
第一章 認識論入門 96
第一節 認識論とは何か、心理学との関係を少し説く 96
第二節 認識論と認識学の違いを説く 99
第三節 認識学とは何か、その三大柱を説く 105
第四節 認識とは脳が描く映像である 110
第五節 南鄕継正講義録「認識は五感情映像である」 114
第二章 実践に必要な「認識と言語の理論」 123
第一節 相手の立場にたつことの必要性と困難性 123
第二節 私達人間はなぜ相手の立場にたたなければならないのか 128
第三節 観念的二重化の実力を養うには 133

第四節 コミュニケーションとは何か 139
第五節 そもそも言語とは何か 143
第三章 私達人間の認識の生生・生成発展を説く 150
第一節 認識から言語への過程の解明が大事である 150
第二節 私達人間の認識と動物の認識の違い 153
第三節 私達人間の認識は社会的に創られる 155
第四節 私達人間の認識の生生・生成発展を説く 158
第四章 認識から言語への過程を説く 163
第一節 無限の認識(アタマの中の映像)を一つの言語に集約する 163
第二節 言語は社会関係の中で教育される 165
第三節 「分かる」ことと「言葉にする」ことは別である 168
第四節 認識=映像の成立過程 171
第五節 認識=映像はすべて個性的に生生・生成する 175
第六節 個性認識=映像を共通認識=映像にするために言語は必要である 177
第七節 「分かる」ために必要な観念的二重化の実力 179
第八節 言語化できる認識=映像を描くための実力 181

第三編 生理学から説く「夢とは何か」 185
第一章 認識の発展の過程的構造を脳から説く 186
第一節 私達人間の脳には大きな二つの働きがある 186
第二節 認識は五感覚器官・脳の成長との相互規定性で発展する 189
第二章 夢の問題の解明に必要な「昼間の生理学」と「夜間の生理学」を説く 191
第一節 夢は睡眠中に脳が勝手に描くものである 191
第二節 脳自体の総括・統括の二つの働きとは 193
第三節 脳の総括・統括は当然に弁証法性を把持する 195
第四節 活動している「昼間の生理学」と休息している「夜間の生理学」 197
第三章 労働と睡眠の関係を説く 202
第一節 私達人間の睡眠は労働による疲労の回復のためである 202
第二節 「疲れ」と「疲労」は論理的には異なるものである 206
第四編 弁証法的に説く「夢とは何か」 211
第一章 「生命の歴史」から説く夢を見る実力への過程 212
第一節 「夢とは何か」の問い方を問う 212

第二節 サルにおける「問いかけ的認識」の芽生えとは何か 214
第三節 脳は生きることを総括し、統括するものとして誕生、発達してきた 216
第四節 哺乳類一般と特殊哺乳類サルの脳の働きの違いは何か 225
第五節 サルは樹上生活で脳の働きが大きく変化してきた 228
第六節 サルは樹木への登り下りを繰り返す過程で脳の実力が向上してきた 234
第七節 サルは樹上生活によって大地からの反映が当然に不足するようになった 238
第二章 夢へと至る認識(映像)の発展過程を説く 245
第一節 認識(映像)形成の原点は外界と五感覚器官にある 245
第二節 認識(映像)は脳の中で創りかえられる 248
第三節 私達人間は教育されて外界を個性的(勝手気まま)に描く実力をつける 252
あとがき 257
付録〔Ⅰ〕観念論と唯物論についての哲学的研鑽を説く 272
付録〔Ⅱ〕海保静子『育児の認識学』の推薦文 280
付録〔Ⅲ〕愛知の中3刺殺・気付きたかった心の闇
(東京新聞 〔社説〕二〇二一年十一月二六日付) 283