『 哲学・論理学原論〔新世紀編〕』―ヘーゲル哲学 学形成の認識論的論理学

南郷継正 著

本書は世界史上最高の哲学者である大ヘーゲルの言にある「哲学は愛知ではなく、学としての体系であるべきだ」との大志を継いで成立した、学、すなわち「哲学の大系」かつ「論理学の体系」である。加えて、認識論・弁証法の体系も学的に説くものである。

学的体系としての哲学、学的体系としての論理学の本当の姿とは一体いかなるものか。
本書には大哲学者ヘーゲルが辿ろうとした学的体系化の大道を、単なる知識としてではなく、読者自らがヘーゲル以上に歩ける(自らの力で哲学の道が歩ける〔philosophieren〕)学的方法が示されている。
このことは、本書を通して学的な頭脳活動を養成していくことで、実感できていくはずである。

■ 第1版/2017年/A5判/416頁
■ 定価 4,800円 (税別) ■ ISBN 978-4-87474-182-5

目次

『哲学・論理学原論』 読者への挨拶

◆ 第1編 現代に至るまでの学問の歴史を俯瞰する

【 第1章 】 哲学・論理学・弁証法・認識論を俯瞰する

第1節 概念化へ向けての人類の苦難の歩みを振り返る

(1) 哲学、論理学は、学的レベルではまだ端緒についただけである
(2) 弁証法及び認識論も、唯物論レベルでは未だ完成途上である
(3) 弁証法は何故完成できていないのか
(4) 学問形成を示唆するエンゲルスの文言とは

第2節 弁証法の生成発展の内実を構造レベルで理解する

(1) 弁証法を学問として完成させるには、どのような理解が必要か
(2) 古代ギリシャの弁証の方法とは
(3) 中世における弁証法の学び方の失敗
(4) 古代ギリシャ以来の弁証法の内実を学ぶとはどういうことか
(5) 弁証法の発展過程から視てとれる弁証法の構造とは

【 第2章 】 哲学を本物の学問として完成させるために

(1) ヘーゲルは学問形成へ向けていかなる歩みをすべきであったか
(2) 大哲人ヘーゲル急逝の「無念」を想う
(3) ヘーゲルの哲学に欠けているものとは何か
(4) ヘーゲルの流れを汲むエンゲルスの弁証法に欠けているものとは何か

【 第3章 】 学問とはいわば世界地図を描くことである

第1節 学問とは、論理としての世界地図を描ききることである

(1) 学者への道は「学問とは何か」の一般図たる世界地図をもって出立すべきである
(2) まずは歴史上描かれた学的世界地図を学ばなければならない

第2節 ヘーゲルは絶対精神の自己運動として学的世界地図を描こうとしていた

(1) 歴史上、アリストテレスをふまえたヘーゲルのみが学的世界地図(体系的地図)を
描く努力をなす
(2) ヘーゲルの学的世界地図とは絶対精神の自己運動を描いたものであった
(3) ヘーゲルは観念論者であるが、彼の哲学は見事に唯物論的であった
(4) ヘーゲルは絶対精神が辿った自然・社会・精神を学問化しようと努めたのである
(5) ヘーゲルの絶対精神の自己運動を「宇宙の自然的・歴史的自己運動」と視做せば
唯物論的展開となる
(6) ヘーゲルの「絶対精神」を観念論と唯物論から論じる
(7) ヘーゲルを理解するには自然・社会・精神の一般教養が必要である

第3節 哲学すなわち学問一般と科学との関係とはいかなるものか

(1) ソフィアからフィロソフィアへの歴史的過程
(2) 哲学とは個別科学のすべてを体系化すべく研鑽して創るものである

◆ 第2編 哲学・論理学・弁証学・認識学を論じる

【 第1章 】 学問と弁証法と哲学を説く

第1節 学問レベルで弁証法の実力をつけるために

(1) 学問と弁証法と哲学の区別と連関
(2) 学問体系構築と弁証法の関係
(3) 弁証法は学問を体系化するための実力である
(4) 弁証法の実力は弁証法の歴史を一身に繰り返さなければつかない

第2節 弁証法の歴史を自ら辿っていくとはいかなることか

(1) 弁証法は学問の土台であり骨組みである
(2) 学問体系は学ぶものではなく、自ら創りあげるべきものである
(3) 学問の使命とは何か
(4) 学問を構築するには古代ギリシャからヘーゲルへの歴史を措定することである

【 第2章 】 哲学とは何か

第1節 哲学の原点たるフィロソフィア誕生の内実を説く

(1) 哲学とは何かを分かるには、その原点から学ばなければならない
(2) ヘーゲルは哲学史をその原点から説いた
(3) ヘーゲルはプラトンの問答を学び「滅ぼしあった対立物の統一」といった
(4) 合宿生活で討論し続けることによって学問的な頭脳ができていく
(5) 「滅ぼしあう対立物の統一」を一人で行えるようになったアリストテレス
(6) 古代ギリシャの哲学は万物を知ることであった

第2節 哲学の形成過程の骨子を説く

(1) 哲学の復興に貢献した中世のトマス・アクィナス
(2) カントの二律背反はゼノンの亜流なのに何故ゼノンの評価は低いのか
(3) アリストテレスからカント、ヘーゲルへの哲学の歴史
(4) 哲学は体系化でようやく学問になると、ヘーゲルは説く
(5) 哲学者になるには哲学の形成過程の歴史を辿らなければならない
(6) 哲学とは学問の総括であり、かつ統括となるものである
(7) 哲学の歴史を繰り返すとは、歴史上の人物に頭脳の働きとしてなりきることである

【 第3章 】 論理学とは何か

第1節 哲学の生成発展の流れで論理学が誕生してくる所以を説く

(1) 学問は素朴一般性、現象論を通して深まり、そこから構造論へ発展する
(2) 概念は生成発展する対象の構造をふまえるとできあがる
(3) 哲学は学問体系を求めたが、それは弁証法の発展でもあった
(4) 哲学は本質的一般論をふまえ、諸学問を駆使するのが使命である

第2節 概念化ができるようになるための頭脳力の養成過程を説く

(1) 学問を志すにはまず唯物論が分からなければならない
(2) 思弁的学力により形而上学は形成されていく
(3) 本物の唯物論はモノの生成発展を説かなければならない
(4) 思弁的学力を養成してこそ概念化ができていく
(5) 人類はアリストテレスに至って初めて思弁力への道の端緒につく
(6) 思弁とは対象とする事実を論理化する過程を思惟することである

【 第4章 】 弁証学とは何か

プロローグ 弁証法の学びを「物語」ふうに説く

第1節 世界の重層構造が視てとれるようになるための弁証法

(1) 学的弁証法修得の一大論理を説く
(2) 世界は一体的全体から生成発展してきている重層的な過程の複合体である
(3) 学問が体系化されるために必須の弁証法とはいかなる弁証法なのか
(4) 学問形成のためには、弁証法を二重構造性で学ぶことが必須である
(5) 弁証法の成立過程から視えてくる弁証法の歴史性、構造性

第2節 学的弁証法の構造を説く

(1) 自然の弁証法性から社会及び精神の弁証法性へ
A 自然の二重構造とは
B 自然と社会との相互規定的相互浸透
C 社会と精神との相互規定的相互浸透
(2) 弁証法(変化法・運動法)の構造を説く
(3) 弁証法的な論理をモノにできる頭脳の働きが可能となるには

【 第5章 】 認識学とは何か

第1節 外界を論理的に把持する頭脳を養成する道程とは

(1) 認識学の基本的な構造を説く
(2) 学問の構築にはまず外界を反映させ像を描く修練をしなければならない
(3) 学問の構築には学的レベルの成熟した思弁の実力が必須だが、
そこへは弁証法的な過程がある
(4) 学問はその時代の認識が成熟しきって、それ以上発展を求めようがない時に
完結される
(5) 学問の歴史は、形成された場合にはその先への発展的歩みがある
(6) ヘーゲルの『大論理学』には論理の体系は存在していない
(7) 人類は事実を頭脳の中で像にし、その像を言語化して歴史を創ってきた
(8) 言葉は事実の概念化であり、認識論・論理学の基本である

第2節 認識学の原点を像の生生・生成過程として説く

(1) 思うとは変化する像を止め、止めた像を、見つめることである
(2) 見続け溜めた像を動かし(考え)、それが筋道となった時に推論という
(3) 学問構築にはまず到達点を持つことが必要である
(4) 思弁とは何かが分かるにはアリストテレスまでの「思う」を実践することである
(5) 思う、考える、思考、思惟、思弁へと認識を発展させてこそ、
学問としての論理体系たる形而上学ができる

第3節 学的認識の発展過程の構造を説く

(1) アリストテレスの認識は形而上学を創出するにはあまりにも幼かった
(2) アリストテレスは表象レベルの像形成への途上にあった
(3) ヘーゲルは形而上学は思惟ではなく論理で創らなければならないとした
(4) 思弁的像を止めて言葉にしたのが概念で、概念の創出・駆使には
弁証法を必要とする
(5) 学問形成過程に関わる人類の認識の発展過程を図示する

◆ 終の編 わが研究会の歩みを概観する

第1節 弁証法の原点から辿っていくことの大事性

(1) わが研究会における闘論(討論)の学的意義
(2) プラトン、アリストテレス時代に創出された弁証法
(3) わが中学時代の「独りっきりの二人問答」
(4) 学問という概念の重層的体系的発展

第2節 学問の体系化へ向けての道程とは

(1) 学問の確立に必要な弁証法の重層構造の学び
(2) ヘーゲルは概念の労苦を説いたが概念は論じきれていない
(3) 認識論の修学なしに学問の体系化はなしえない