『 哲学・論理学研究 (2)』―学的論文確立の過程的構造

悠季真理 著

哲学は、古代ギリシャのアリストテレス以来、学の王とも言われてきたように、全ての学問の頂点に立って、それらを統括する学であり、あらゆる個別分野の問題に対しても、一般科学レベルから、筋道を通して解決への指針を示すものである。
こうした哲学の本質的な研究を 志すのであれば、単に過去の哲学書の解釈などに留まるべきでなく、全ての学問領域を対象として、それらを統括すべく、自身の頭脳を哲学ができる頭脳として創出する研鑽を積むべきである。
本書は、従来の哲学の研究・解説書等とは一線を画し、自らの頭脳を学問化可能なものとする実践について、すなわち、学問構築のための基盤づくりのあり方について、説いた書である。
端的には、学問を志す初学者へ向けた、学問上達論 ・ 基礎編である。

【第2巻】
■ 現代社白鳳選書110
■ 第1版/2020年/248頁/定価 2,000円 (税別)
■ 四六判/ISBN 978-4-87474-190-0

目次

【第1編】 哲学構築に向けての自然、社会、精神に関わる学びを説く

第1章 自然科学を構築していくには学的世界観が必須である

第1節  学問を志す者にとって大前提となる学的世界観を説く
第2節  近代の唯物論はどうにも観念論的であった
第3節  学の体系化のためには弁証法的な唯物論が必然である
第4節  地球上での物質の生成発展について ― 弁証法的唯物論とは何か
第5節  ヘーゲルの弁証法から生命の歴史、世界歴史の全体像を説く
第6節  現代物理の根本問題について唯物論から考えるとどうなるか
第7節  地球に比して火星など他の惑星の生成発展とはいかなるものか

第2章 学問一般をふまえて社会科学を構築していくべきである

第1節  「学問と宗教の歴史的一般性」 を理解しよう
第2節  『武道哲学講義』 から、社会の歴史、哲学の歴史を考察する
第3節  法とは何かは学的に理解すべきである
第4節  法は国家形成の過程で必然的に創られるものである
第5節  国家形成への道を考える ― 戦闘から戦争へ至る過程的構造とは何か
第6節  本能的認識から規範が形成されるまでの量質転化の過程を問う

第3章 世界歴史をふまえてこそ精神の発展の流れが理解可能となる

第1節  古代から近代への哲学の歴史の全体像を観てみよう
第2節  学問史上におけるトマス・アクィナスの復権が必要である
第3節  ヘーゲルは中世の哲学をどう捉えていたのか
第4節  トマス・アクィナス 『神学大全』 を俯瞰してみよう

【第2編】 古代ギリシャ哲学、その学び方への招待 〔後編〕

第1章 オリエントから古代ギリシャへの段階を正しく学ぼう

第1節  オリエント段階の人類の認識のレベルとはいかなるものか
第2節  オリエント段階をふまえることで
ギリシャでの学問的認識の芽生えが可能となったのである

第2章 ソクラテスレベルからプラトンレベルへの認識論的発展を説く

第1節  プラトンの対話についての従来の見解とその問題点を論じる
(1) ヘーゲルはプラトンをどう評価しているか
(2) プラトンのディアレクティケーについての諸研究に見られる限界を問う
第2節  プラトンの生きた時代とプラトンの置かれた社会的状況を説く
(1) 相次ぐ戦争による激動・混乱とその中での亡命生活の実態を説く
(2) アカデメイアの学頭としての後半生の学的意義を説く
(3) プラトンの社会的立場に規定された認識の形成はいかなるものか
第3節  プラトン対話篇の中に見てとれる認識の発展過程を問う
(『国家』 第1巻より)
(1) ソクラテスからプラトンへ ― ヘーゲルが見てとれなかったものとは何か
(2) プラトン的対話を重ねることで、
彼の認識はどのように変化かつ発展していったのかを論じる
― 対立物の統一的レベルへと向かうまでの長い苦闘とは何か
(3) 観念的二重化として対話を捉え得たプラトンの学的功績
― 討論 (闘論) の連続の意義をある一つの “技” であると
気づいた凄みを論じる

第3章 プラトンの論理レベルからアリストテレスの論理への発展を視る

第1節  アリストテレス哲学についての従来の見解とその問題点を説く
(1) ヘーゲルはアリストテレスをどう評価しているか?
(2) 従来のアリストテレスの評価についての問題点を問う
第2節  アリストテレスの生きた時代と
彼の社会的立場に規定された認識の形成を論じる
(1) アカデメイアでの研鑽過程の実態とは何か
(2) マケドニアの世界制覇と表裏一体をなす学的認識の形成を論じる
第3節  アリストテレスの学的実力は学問の歴史の中でどう位置づけられるべきか
(1) 賢人たちの見解を概括する中で、物事の究明法を目的意識的に問い返すとは
(2) アリストテレスの 「ウーシア」 を本質レベルの概念とすることの誤謬を説く
(3) アリストテレスの学的実力は、
現象形態の表象レベルのいわば論理化が上限である
(4) 感覚されるものとは異なるもの (論理) を求めての苦闘の道程を説く
第4節  アリストテレスの言語表現の背後にある学的認識について論じる
(1) 『哲学・論理学研究』 第1巻執筆の過程で分かってきたことを少し説く
(2) τ? τ? ?ν ε?ναι は哲学界でどのように捉えられてきたか
(3) アリストテレスはいかなる学的高みの像を描けるようになったのか
(4) アリストテレスの学的な像の形成過程を
生命現象の生生・生成発展過程と同様の論理で説いてみよう
(5) アリストテレスの学的な表象像の中身を時代性をふまえて具体的に論じる