『 新・頭脳の科学(上) 』 ―アタマとココロの謎を解く
瀬江千史 ・菅野幸子 著
現代ほどに「脳」 「頭脳」 「アタマ」 「ココロ」 などの言葉が溢れている時代はない。
新聞を開けば、「認知症予防の脳トレーニング」「アタマのよい子に育てるには」等々、毎日のように目に入ってくる。
しかし残念ながら、それらはすべて、その大本がわからないままに論じられているために、時にはとんでもなく誤った見解になっていることがあるという。
では、その大本とは何か?
それは、「人間の頭脳とは何か」を学問的に解明した体系的な理論であるという。
本書は、『綜合看護』誌上に連載された「看護のための生理学・脳の話」を元に、医療関係者だけでなく、広く一般の人達にも学んでもらいたいとまとめられ、これまで脳科学者が解明してきた、生命体としての単なる「脳」ではなく、認識的実在である人間としての特殊な脳、すなわち「頭脳」を解明した、歴史上初めての理論書である。
■現代社白鳳選書 34
【上巻】 第1版/2012年/240頁/定価 1,900円 (税別)
四六判/ISBN 978-4-87474-147-4
目次
【 第1編 】 人間の頭脳の解明に必須の過程を説く
第1章 人間の頭脳の解明には 「認識学」 が必須である
第1節 人間は認識的実在である
第2節 本来の生理学は 「認識生理学」 でなければならない
第3節 「頭脳論」 に大きく関わる 「認識学」 とは何か
第4節 科学的体系である 「認識学」 とは
第5節 「科学的頭脳論」 と 「科学的認識論」 は表裏一体をなす
第2章 頭脳の研究の現状とその欠陥
第1節 現代生理学の頭脳論は即物実体論でしかない
第2節 頭脳科学は科学的な頭脳の実体論と科学的な認識論の統一が必要である
第3節 頭脳科学は生きかつ生活している人間の頭脳の実態を解明しなければならない
第4節 人間の頭脳の究明は 「生命の歴史」 をふまえなければならない
【 第2編 】 科学的に解く 「人間の頭脳とは何か」
第1章 人間の頭脳の解明には 「生命の歴史」 が必須である
第1節 現代生理学が示す 「脳とは何か」
第2節 「ヒトではない人間としての頭脳とは何か」 の究明を
第3節 人間としての頭脳の解明には 「生命の歴史」 が必要である
第4節 生命体にとって脳は統括器官としての中枢である
第5節 実体的脳は 「生命の歴史」 における魚類段階で誕生した
第6節 実体的脳の誕生は地球上の水の生成発展に鍵がある
第7節 生命体の脳は運動器官と代謝器官の分化を統括するために誕生した
第2章 人間の頭脳の統括の二重構造を 「生命の歴史」 から説く
第1節 認識形成は頭脳の統括の一つの構造である
第2節 人間の認識とは頭脳が描きだす像である
第3節 認識形成の原基形態は魚類の脳にある
第4節 動物の脳が形成する像と人間の頭脳が形成する像の違い
第5節 魚類の脳に形成される像は移動に必須のものである
第3章 認識の形成と脳・頭脳の統括の構造との関係を説く
第1節 人間の認識は問いかけ的反映である
第2節 認識の形成と脳・頭脳の統括の構造との関係を問う
第3節 魚類の脳における像の形成と運動・代謝の統括の構造との関係
第4節 生命体の進化の歴史は自らの代謝の安定・維持のためである
第5節 魚類における器官分化は内部環境の恒常性維持のためである
第6節 魚類の脳における像の形成は運動の統括の構造に含まれる
【 第3編 】 「人間の感覚とは何か」 を 「生命の歴史」 から説く
第1章 頭脳は運動と感覚を直接的同一性で統括する
第1節 外界の反映像は運動の統括に必須である
第2節 運動と感覚は直接的同一性である
第3節 そもそも運動とは何か
第4節 「運動」 概念の論理のレベルの多重構造
第5節 生理学教科書の 「感覚」 の説明
第6節 現代生理学の説く 「感覚」 批判
第2章 「人間にとって感覚とは何か」 を生理面の二重構造から説く
第1節 脳・頭脳は生きるために内界および外界を統括する
第2節 生命体としての感覚は内界と外界の変化を感知することにある
第3節 高等動物の感覚は内界と外界の変化を感知して脳に像を形成する
第4節 人間の感覚の特殊性は認識によっても統括されることである
第5節 人間の感覚器官と脳・頭脳の実体と機能とは何か
第6節 人間の認識の特殊性を考える
【 第4編 】 脳・頭脳の実体構造の弁証法的解明
第1章 脳・頭脳の実体構造の発展過程を 「生命の歴史」 から説く
第1節 人間の認識は動物の形成する像とは質的に異なる
第2節 人間の頭脳と動物の脳の実体構造の違い
第3節 解剖学と生理学は統一して教えなければならない
第4節 生命体の機能と実体構造の変化・発展の関わり
第5節 魚類と両生類の運動形態と脳の実体構造の関係
第6節 両生類から哺乳類への運動形態の発展を支えた脳の実体構造
第2章 脳・頭脳の学問的解明に必須の 「弁証法」 の学びを説く
第1節 事実の構造に分け入るとはどういうことか
第2節 事実を見てとる一般的なアタマの働きの過程
第3節 事実は生成発展としてその必然性をも見てとらなければならない
第4節 対象を弁証法性において捉えることの重要性
第5節 事実の構造に分け入るには弁証法の学びが必須である
【 第5編 】 人間の頭脳の実体構造の特殊性を 「生命の歴史」 から説く
第1章 人間の頭脳の実体構造の特殊性を説く
第1節 人間の脳の解剖的事実
第2節 人間の小脳の神経細胞の多さは運動の多様性による
第3節 小脳の発育は脳全体の発育と直接的同一性である
第4節 脳を構成する細胞の特殊性
第2章 人間の大脳の特殊性の構造を説く
第1節 人間における大脳の特殊構造
第2節 胎児の脳の発育過程は人間の頭脳の発展過程を辿る鍵である
第3節 「個体発生は系統発生を繰り返す」 の論理構造
第4節 胎児における脳の発育過程を見る
第5節 人間は脳の働きの未完成の部分を残したまま誕生する