『 新・頭脳の科学(下) 』 ―アタマとココロの謎を解く

瀬江千史 ・菅野幸子 著

現代ほどに「脳」 「頭脳」 「アタマ」 「ココロ」 などの言葉が溢れている時代はない。
新聞を開けば、「認知症予防の脳トレーニング」「アタマのよい子に育てるには」等々、毎日のように目に入ってくる。
しかし残念ながら、それらはすべて、その大本がわからないままに論じられているために、時にはとんでもなく誤った見解になっていることがあるという。
では、その大本とは何か?
それは、「人間の頭脳とは何か」を学問的に解明した体系的な理論であるという。
本書は、『綜合看護』誌上に連載された「看護のための生理学・脳の話」を元に、医療関係者だけでなく、広く一般の人達にも学んでもらいたいとまとめられ、これまで脳科学者が解明してきた、生命体としての単なる「脳」ではなく、認識的実在である人間としての特殊な脳、すなわち「頭脳」を解明した、歴史上初めての理論書である。

■現代社白鳳選書 35
【下巻】  第1版/2012年/224頁/定価 1,900円 (税別)
四六判/ISBN 978-4-87474-148-1

目次

【 第6編 】 学問の発展史をふまえて 「大脳局在論」 の誤りを説く

第1章 人間の頭脳の解明のために 「大脳局在論」 を俎上に載せる

第1節  人間の認識は文化とともに病気をも生みだした
第2節  人間の認識が頭脳の働きであると把握されるまでの歴史
第3節  現在の脳研究の基盤である 「大脳局在論」 は誤りである
第4節  「大脳局在論」 を導いた 「骨相学」
第5節  「大脳局在論」 は危うい基盤のうえに成り立っている
第6節  「大脳局在論」 の理解には世界観が必要である

第2章 人間の認識の解明に必須の 「世界観」 について説く

第1節  世界観としての観念論と唯物論
第2節  頭脳の解明のためになぜ世界観が必要か
第3節  観念論から唯物論確立への歴史性
第4節  世界観は学問を体系化する時に必須となる
第5節  科学は必然的に唯物論の立場に立つ
第6節  唯物論を把持し続けないと観念論の立場に転落する

第3章 世界観をふまえて 「大脳局在論」 の歴史を辿る

第1節  人間の 「ココロ」 の解明には 「科学的頭脳論」 が必要である
第2節  「科学的頭脳論」 には唯物論に立った弁証法の実力が要求される
第3節  「大脳局在論」 と 「全体論(単一論)」 の歴史的闘争
第4節  ドイツ観念論哲学による 「大脳局在論」 批判
第5節  「大脳局在論」 を受け入れたフランスのタダモノ論的土壌
第6節  「大脳局在論」 では認識は解明できない

【 第7編 】 人間の頭脳の学問的解明から 「大脳局在論」 の誤りを説く

第1章 人間の脳の神経の働きと認識形成の働きの相違

第1節  世界観をふまえた学問の潮流から 「大脳局在論」 の歴史をみる
第2節  「大脳局在論」 では人間の認識は解明できない
第3節  「大脳局在論」 の根拠となった事実
第4節  頭脳の神経の働きと認識形成の働きの次元の違い
第5節  頭脳は総力をあげて統合的な一つの像を形成する

第2章 人間の頭脳の体系的理論から 「大脳局在論」 の誤りを説く

第1節  「大脳局在論」 が定説になっているのはなぜか
第2節  定説の是非は事実とされるものからのみ判断してはならない
第3節  定説の是非は体系的理論に基づいて判断しなければならない
第4節  体系的理論を構築するための研鑽とは
第5節  頭脳は頭脳自身を統括することによって全身を統括する

【 第8編 】 「生命の歴史」 から脳の統括における像形成の必然性を説く

第1章 脳が脳自身の統括によって全身を統括することの構造

第1節  生命体の脳は全体が一つのものとして働くように形成された
第2節  人間の頭脳は原基形態である魚類の脳の発展形態である
第3節  脳は統括のため全身のあらゆる部分と密接につながっている
第4節  魚類の脳は外界と内界からの反映を統合した一つの像を形成する
第5節  頭脳が像を形成することの証明は魚類の脳にさかのぼる

第2章 魚類から両生類、哺乳類への脳の発展過程

第1節  魚類の脳から人間の頭脳に至る発展過程には三段階がある
第2節  海中と大地を生きることになった両生類の脳の統括の構造
第3節  大地をかけめぐる運動形態を獲得した哺乳類の脳の統括の構造

【 第9編 】 人間の認識誕生への過程的構造を説く

第1章 サルの脳の像の形成に変化をもたらした運動形態の変化

第1節  人間の頭脳は哺乳類の脳が質的転化をとげたものである
第2節  地上の大激変がサルを誕生させた
第3節  サルの四肢から両手両足への分化は樹木への発展との相互浸透による
第4節  人間の頭脳の認識形成の端緒はサルの段階にある
第5節  哺乳類の四肢とサルの両手・両足の運動形態の違いによる脳の違い
第6節  サルの両手・両足の独立的運動が像の形成に変化をもたらした

第2章 サルの脳の像の形成に変化をもたらした樹上生活

第1節  哺乳類とサルの運動形態の構造の違い
第2節  サルの運動形態の重層化が脳の実力の発展をもたらした
第3節  サルの樹上での生活が脳における像の形成に変化をもたらした
第4節  樹上生活によってサルの脳が描く像の特徴
第5節  サルの脳は像創出の萌芽形態をもつことになった
第6節  人間の子育てにおいて哺乳類からサルへの過程を辿らせる重要性

第3章 サルが大地に降りてヒトから人間へと発展した過程的構造

第1節  人間の認識形成へと至る原点としてのサルの脳が形成する像
第2節  学問的究明には過程的全体像の把握が必須である
第3節  サルの脳の像形成の発展段階
第4節  サルは樹上での像と大地での像の違いに気づきヒトへと進化する
第5節  サルからヒトへの発展は 「生命の歴史」 の中で特殊なものである
第6節  像創出の萌芽形態をもったサルがヒトへ、人間へと発展した
第7節  本書はヒトの脳ではなく人間の脳とは何かをわかるためにこそ

【 第10編 】 人間の頭脳を解明するための科学的頭脳論

第1章 『新・頭脳の科学』 上巻・下巻の概括

第1節  21世紀は 「頭脳とココロ」 が大きくとりあげられる時代
第2節  「大脳局在論」 の立場では人間の認識は解明できない
第3節  脳の機能である認識は物質と同じ研究方法では解明できない
第4節  人間の頭脳と認識の解明には 「認識学」 の学びが必須である
第5節  生命体にとって脳は中枢としての統括器官である
第6節  脳は内界と外界の二重の統括を行う
第7節  脳の統括は像の形成が必須である
第8節  魚類の脳から三段階の過程を経て人間の頭脳へと発展した
第9節  すべての頭脳の問題は 「科学的頭脳論」 から解くことができる