『障害児教育の方法論を問う(2)』 ―人間一般から説く科学的障害児教育
志垣司・北嶋淳 著
障害児教育の世界に画期的な理論書が誕生した。
本書の上梓を著者らが決意した動機は、障害児教育が今日まで経験的実技レベルの教育指導にとどまってきた結果、教育現場に先の見えない混乱が続いていたからである。
著者らは長く障害児教育の実践家として活躍してきたが、いつしか教師としての自分たちの教育のあり方に疑問を持つようになった。
それは障害児教育に指針となる確固たる理論がないゆえに、自らが実践している指導方法を評価する術がなく、また指導で生じた疑問を解くための拠り所もないために、次第に行き詰っていったからであった。
これまでの経験則的な障害児教育に限界を覚え、障害児教育を正しく導いてくれる理論の必要を感じていた著者らは、学問の広い世界との出会いによって、障害児教育の理論化への道を歩むことになる。
そして艱難辛苦の幾年の後、ようやくその一般的方法論をここに確立し得、理論化の端緒に立つことができたのである。
「人間とは何か」「教育とは何か」「障害とは何か」など、障害児教育にかかわる大本を一般論として据え、そこから障害児教育の真のあり方を問う本書は、きっとかつての著者たちと同じように、障害児の教育方法に迷い悩む多くの人達の導きの糸になるであろう。
■現代社白鳳選書 47
【第2巻】 第1版/2017年/280頁/定価 2,300円 (税別)
四六判/ISBN 978-4-87474-181-8
目次
【 第1編 】 科学的実践方法論の論理を深める
序 章 現代障害児教育に欠けているもの
第1節 一般論の不在
第2節 「過程性」 への着目の不在
第1章 障害児教育の科学的実践方法論に基づいた意志の育成過程を説く
第1節 意志の育成を取りあげる理由
第2節 障害児から学ぶ意志の成長過程
第3節 障害を受けて育つ意志の歪みとは何か
第4節 M子への教育を障害児教育一般から説く
第2章 障害児教育の科学的実践方法論に基づいた学級づくりを説く
第1節 障害児教育の実践方法論の骨子を改めて問う
第2節 障害児教育の科学的実践方法論を適用した学級づくり
第3節 障害児教育一般から説くS子の変化
第4節 実践方法論は学級づくりと一体化したもの
第3章 科学的実践方法論に基づいた脳性まひ児への運動教育を説く
第1節 脳性まひ児への運動教育の現状と問題点
第2節 機能訓練と教育
第3節 脳性まひ児A子の運動の変化過程
第4節 A子の運動の育ちを障害の二重構造より説く
第5節 科学的実践方法論に基づいた脳性まひ児への運動教育とは
【 第2編 】 質問に答えて
第1章 『障害児教育の方法論を問う (第1巻)』 からの質問
第1節 自立活動で立てた目標の妥当性について
第2節 障害の二重構造の見極めについて
第3節 介助と教育の違いとは何か
第2章 実践上の質問に答えて
第1節 体調管理と学習のバランスをどうとるか
第2節 手を使うことを止められた脳性まひの子供
第3節 成人の脳性まひ者の側彎にどう対処したらよいか
第4節 家庭へはどのように伝えていくか
第5節 常に動いていて落ち着きがない児童への対応
【 特別編 】 〔 菅野幸子・講演録 〕 生命の歴史から見た人間の頭脳活動の成り立ち
―― 子供達のより良い頭脳活動を育むために
はじめに ―― すべての物事を歴史性あるものとして見ていくことの大事性
第1章 脳科学研究の現状と問題点
第2章 人間とはどのような存在なのか
第3章 人間とはどのような存在かを、生命の歴史を遡って考える
第1節 人間の脳は認識を形成する
第2節 生命の歴史に見る脳の誕生と進化
第3節 動物の脳が描く像とは
第4節 動物の脳と人間の頭脳の違い
第5節 外界の変化と動物の脳の発達
第6節 人間の脳の形成を胎児期から見ていくと
―― 個体発生は系統発生を繰り返す
第4章 頭脳の働きをより良くしていくには
第1節 子供の身体の発育と頭脳の発達のさせ方
第2節 頭脳の働きは感覚器官の実力によって規定される
第3節 外界との関わりが少ないと認識を形成する力も見事には育たない
第5章 頭脳の活性化に必要な食事とは
第1節 バランス良く食べることが大事と言われることの意味
第2節 サルはどのような生活をすることでヒトになれたのか?
第3節 食生活と子供の頭脳の発達との関係