初学者のための『看護覚え書』(第3巻)―看護の現在をナイチンゲールの原点に問う

神庭純子 著 ナイチンゲールが看護の原点を著した 『看護覚え書』 は、看護学生であれば誰もが最初に出会う看護の基本書であるが、看護を学びはじめた初学者がこの著作をどう読めば、真にナイチンゲールの言葉を理解することにつながるのであろうか。 本書は、初学者が 『看護覚え書』 に書かれている言葉を その言葉のままに読むのではなく、その言葉からナイチンゲールの 「ものの見方」 や 「考え方」を読み取り 学ぶことで、現代の看護に関わる現実を見てとる能力や そこから課題を見出す能力、そして論理的に それら課題に対応できる実力を培えるように、と説かれている。 時代が変わっても 決して変わることのない、看護としての基本的なものの見方、考え方を、ナイチンゲールの説いた言葉から学び取り、看護者としての自己を創りあげ、成長させる基礎力を身につけるのに本書が、そのよい手助けとなるであろう。 ■現代社白鳳選書37 【第3巻】  第1版/2013年/240頁/定価 1,800円 (税別) 四六判/ISBN 978-4-87474-154-2

目次

■第1章 『看護覚え書』 に学ぶとは ― 『初学者のための 『看護覚え書』(1)』 の要旨 第1節 看護とは何かを問える実力を身につけるために必要な学びを説く 第2節 看護のために必要な弁証法、認識論の実力 第3節 看護者に求められる一般教養の学び 第4節 「健康の法則=看護の法則」 として視てとったナイチンゲールの 実力とその教養 ■第2章 『看護覚え書』 から生活過程の構造を学ぶとは ― 『初学者のための 『看護覚え書』(2)』 の要旨 第1節 「人間にとっての食事とは何か」 を説く 第2節 ナイチンゲールの説く 「換気と保温」 「住居の健康」 に学ぶ 第3節 認識論の基本から 「物音」 「変化」 の意味を説く 第4節 「ベッドと寝具類」 を整えることの看護としての意味を説く ■第3章 ナイチンゲールの説く 「陽光」 の重要性に学ぶ 第1節 ナイチンゲールの説く 「陽光」 の大切さ 第2節 陽光が人間の身体に及ぼす影響を事実に見る 第3節 陽光が空気の質に及ぼす作用を指摘したナイチンゲール 第4節 陽光の重要性を看護活動の事実から説く 第5節 陽光が病む人の心にもたらす効果 第6節 病む人にとって 「陽光」 は不可欠であると指摘したナイチンゲール 第7節 ナイチンゲールはなぜ陽光の重要性に気づくことができたか ―育ちの過程で創られた看護者としての生活観 ■第4章 人間にとっての陽光の大事性の意味を 「いのちの歴史」 から説く 第1節 看護者としての生活観を創り上げていくことの大切さ 第2節 人間にとっての陽光の大事性の意味を問う 第3節 個別研究的に答えを導き出すことの欠陥 第4節 論理的な筋道から答えを導き出す視点 ―弁証法的に太陽と地球と生命体との関係から陽光の大事性の 意味を問う 第5節 人間にとっての陽光の大事性の意味を 「いのちの歴史」 に尋ねる 第6節 人間の生活にとっての 「陽光」 の意味を説く 第7節 病む人の心に及ぼす 「陽光」 の意味を説く ■第5章 ナイチンゲールの説く 「部屋と壁の清潔」 に学ぶ 第1節 「部屋と壁の清潔」 を保つことは 「新鮮な空気」 の質に関わる 第2節 人間の生活にとって室内を清掃することの意味 第3節 室内を清掃することの目的を問うことが大切であると指摘した ナイチンゲール 第4節 看護の基本の学びは、その目的性から理解することが重要である 第5節 ナイチンゲールが指摘した 「不潔が発生する経路」 の原因と対策 第6節 室内の清潔を保つ方法を現代の事実から説く 第7節 病む人にとって 「部屋と壁の清潔」 が重要である理由 ■第6章 「部屋と壁の清潔」 の重要性を認識論の基本から説く 第1節 人間が生きて生活することにとっての 「換気」と「清掃」 の必要性 と重要性 第2節 病む人にとって室内環境を整えることの意義 第3節 人間の認識活動の過程的構造を説く 第4節 人間の認識の実力はどのように形成されるのか 第5節 「部屋と壁の清潔」 が病む人の認識の形成過程に及ぼす影響 第6節 病む人の認識 (=像) を整える看護の実力をつけるためには ■第7章 ナイチンゲールの説く 「からだの清潔」 に学ぶ 第1節 ナイチンゲールの説く 「からだの清潔」 の大事性 第2節 「からだの清潔」 の保持は看護にとって生活過程を整える援助の 柱である 第3節 皮膚の清潔保持の意味を換気の大事性との関係から指摘した ナイチンゲール 第4節 人間が呼吸することの意味から換気の大事性を問う 第5節 「からだの清潔」 を人間と自然との相互浸透の過程性から捉えた ナイチンゲール 第6節 皮膚を清潔に保つための方法とは ■第8章 管理するとはどういうことか ―ナイチンゲールに学ぶ 「責任を持つ」 ことの意味 第1節 良い看護をしても 「小管理」 が欠ければ台無しになるという ナイチンゲールの指摘 第2節 ナイチンゲールの説く 「責任を持つ」 とはどういうことか 第3節 「小管理」 が欠けていることの弊害 第4節 「責任を持つ」 ことの意味を学ぶことの重要性 第5節 責任を持つ指揮官のあり方の具体をクセノフォンに学ぶ 第6節 ナイチンゲールが目指した看護とは ■第9章 ナイチンゲールに学ぶ組織論、管理論、教育論 第1節 ナイチンゲールの説く 「責任を持つ」 ということの意味 第2節 見事な看護の実践者としての管理責任者の存在の大事性 第3節 病む人にとっての 「小管理」 の意味を問う 第4節 管理責任者に求められる実力とは ―責任者のなすべき本当の 「小管理」 のあり方 第5節 ナイチンゲールの管理者としての看護実践 第6節 看護の専門職としての確立とその教育の必要性を指摘した ナイチンゲール ■第10章 ナイチンゲールの説く 「病人の観察」 に学ぶ 第1節 ナイチンゲールの 『看護覚え書』 は教育の原点である 第2節 病人の観察は看護教育の基本であると指摘したナイチンゲール 第3節 看護者にとって正確に観察することの重要性 第4節 事実を正確に把握するにはどうしたらよいか 第5節 看護者として観察することの目的を問うことが必要である 第6節 認識の働きの過程性から看護者として観察することの困難性を説く ■第11章 学問化への基本の学び ―事実とは、解釈とは 第1節 正確な事実を把握することの大事性を説いたナイチンゲール 第2節 観察するとはどういうことか ―ナイチンゲールの指摘した二つの観察不足とは 第3節 事実と解釈との違いを理解することの大事性 第4節 正確な事実を把握することの困難性を看護の具体から説く 第5節 看護するために事実を把握する具体的な実践例 第6節 ナイチンゲールの説く二つの観察不足を現代の看護の事例に見る 第7節 正確な事実を把握する実力を養成することの重要性 ■第12章 認識論の学びの基礎から 「観察」 することの構造性を問う 第1節 観察の困難性を看護の対象である人間の一般性から問う 第2節 観察の困難性を認識論の基本から説く 第3節 観察の困難性を看護者の認識の過程性から問う 第4節 認識論の基本の理解が実践を導いた具体例 第5節 観察と思考の訓練の必要性を指摘したナイチンゲール