『人体美学(下巻)』―美術解剖学を基礎として

西田正秋 著作集

故・西田正秋教授は、日本の美術解剖学の祖である森 林太郎(鴎外)、久米桂一郎の後任として、1926年から東京美術学校で「西田式美術解剖学」の講義をおこなった。

本書の内容の多くは、遺稿として残された120冊の研究ノートからの転記である。

本書は、整然とした体系指向による序列、つまり抽象論・一般論から具象論・各論へ、原理論から応用論へ、そして形象諸美学へ というように厳格な論旨に貫かれている、まさに人体美学の金字塔といえる内容である。

B5判・上製本・ケース入
【下巻 】 第1版/1993年/512頁/定価 8,000円 (税別)
ISBN 978-4-87474-076-7

目次

序言/懐かしの声・西田先生の著作集

【第3部】

人体美学応用論

(1)日本仏教彫塑像の研究

A.概説
緒言
1.序論
2.地理的認識 松/土の色/実例指示
3.歴史的認識
4.仏教文化の東漸
唐の性格/唐の外来文化/インドの様相/諸作例提示
5.仏教像関係・諸分類
像種分類/容姿的(Pose)分類/法量(Size)による分類/材料的分類/像体・附属部分の名称/様式的分類(衣紋の皺襞)/補遺一束
6.飛鳥時代
北魏式(止利式)/斉・隋式/飛鳥における頭身示数過大・過小の問題
7.白鳳時代 塑像/青銅像/薬師寺/補遺
8.奈良時代 乾漆像/塑像/青銅像・石像/木彫像
9.弘仁時代
初期の正統と考えられる作例/飜波式の典型的なグループ/檀像彫刻風の作例/明王像/中期の像/肖像彫刻/地方色著しい作例/舶来の作例/末期の作例
10.平安時代 如来像/菩薩像/天部像/肖像/特殊/補遺
11.鎌倉時代
概説/仏師略系譜/各派・各人の作例/擬古作/宋風作例/肖像彫刻/その他
12.室町時代
13.桃山時代
14.江戸時代
15.東京時代(仮称)

B.作例研究
1.仏教像の顔面研究
序言/飛鳥時代/白鳳時代/奈良時代/弘仁時代/鎌倉時代/附記
2.日本仏教彫刻の微笑形 附記
3.東西美術における憤激の表情について
ヨーロッパにおける作例への考察/日本における作例への考察/ヨーロッパの作例考察/我が国の作例考察
4.薬師寺聖観音像の頭身示数について
研究対象/序/計測法の工夫/計測実施条件/像高の実測と身長の算出/頭身示数/生体との比較に関する略記
5.弘明寺鉈彫本尊の測定と考察
序/本尊測定前の諸問題/本尊の測定/本尊の各部測定/測定結果の所見/鑿痕の考察/写真撮影/附記/鉈彫形成の問題
6.東大寺南大門の仁王について
東大寺南大門の仁王についての一考察
研究対象としての仁王像/研究対象への参考資料一束/実地観察の機会/実地観察の収穫/事後の考察
東大寺南大門の両仁王像について
序言/画説所載拙論の要約/仁王像形姿の一般的特徴/法量とその比例と頭身示数/両像の骨格想定記入による比較と知見/両像の筋想定記入による比較と知見/遠近法的制御表現の有無についての考察/吽像の投光効果と曲勢の相関性について/南大門・両仁王・配置交換・解説/両仁王像の造形的優劣について/補遺
7.三十三間堂 二十八部衆の観賞
二十八部衆の美術的な価値/製作の材料と手法/絶妙な表現/各像観賞への案内
8.鎌倉の大仏 鎌倉の大仏はなぜ美しいか/鎌倉の大仏が秘める二つの不思議
9.中尊寺 金色堂の孔雀
序言/孔雀の装飾化/孔雀の作例概観/眼紋羽の比較研究/附記
10.雲崗石仏巨立像の比例短縮について
雲崗石仏概説/比例の短縮表現/頭身示数提示/作例の傾向/比例短縮の要因/表現効果の問題

(2)能面の研究(附:狂言面・その他)

自序
1.能楽について 能楽の定義/能楽の構成/能楽の種類/ 能楽の起源と要因/謡曲について
2.能面の名称と種類 能面の名称/能面の種類
3.能面各論
悪路王悪尉/能面小面の研究/般若について・般若面の系譜探究/狂言面の話/日本の古面/能面の動態表現/能面観賞への特殊問題
4.能面随筆 能面研究開始の思い出/能面随筆①~⑧
5.その他 能狂言面の源流についての考察/獅子頭研究・予想記

(3)人体美学の諸問題

1.絵そら事の科学的肯定
序言/不自然と不必要の存在/池と鯉の理/不自然なような自然/茶碗の糸底論/結言/附記
2.浮世絵の型と幼児表現
浮世絵の型/型による表現の長短/浮世絵の美女と子供/御所人形の幼児表現/浮世絵と人形との相関性/若干の応用と帰結
3.絵画における歪曲の問題
序説/作例の観察/作例の共通性/作例の解釈/次にくる問題/認識の必要/補遺
4.美術におけるAnamorphosisの一問題について
問題に対する第1hint/第2hint,図学におけるAnamorphosis/第3hint,魚類の形態学上の問題/考察への構想/具体的示例/補足的適例/追記
5.着衣像における肉体の問題
緒言/作例の吟味/結言/補遺 東洋の作例/附記
6.女性の姿態美
肉体美と装飾美/均整美/後面美と側面美/静観美と運動美/附記
7.人体背面美の問題
体幹の前面と後面の比較/西洋の作例/ギリシャ以後/背面美の認識/東洋の場合
8.写真における運動形表現法の問題
前提/美術上の表現法の分類/特殊な表現法/附記1/附記2/結言
9.和洋舞踊への一考察と撮影の問題
脚部の動作の比較/撮影の問題/選択と工夫/挿画説明/附記

(4)怪奇美

1.グロテスク・ビューティーの発現要因
2.曽我蕭白筆「柳下鬼女図」
3.怪奇美の錦絵
4.河童雑記
5.Medical Imagery in 12th Century Japanese Scrolls

【第4部】

付 動物美学

序 動物美学の存在の必然性
1.民族と動物表現
2.民族と特定動物
3.動物体の方位
動物体の方位/哺乳類中,殊に有蹄類における頭首の安定性静止形の水平位について/体制形態による難易方位の分類表
4.動物の体制
哺乳類の前後・左右体制について/哺乳類正常位・腹面方位模型図/各動物の各肢・前進関節・屈曲方向模型図/シンメトリー・交叉性運動分類表/獣類の坐臥のポーズ
5.動物の比例 動物の比例/長頸曲線と鳥の重心支点の位置/ 頸長と肢長
6.動物の運動
哺乳類の体幹後屈/ジラフの吻端接地における前脚開脚について/哺乳類の後脚外転の例/坐立における四肢の順序
7.Buildの問題
8.動物のプロポーション作図集
ジラフのプロポーション/ジラフの作図法/ジラフをゼブラのプロポーションに伸縮したデフォルマシオン指示図/ゼブラの作図法/ゼブラの頭首プロポーション/ギボンのプロポーション/ゴリラの顔面プロポーション/オランウータンのプロポーション/チンパンジーのプロポーション/猿類の上肢:下肢のプロポーション/蝙蝠の集弧的形体/洞角の曲勢
9.象の美術
象の体型と美術/殷の象/アフリカ象の耳介の大きさ/インド象 頭首:耳介/アフリカ象・親仔のプロポーション比較図/象集/インド象・アフリカ象・マンモスの側面図
10.犀の美術
多摩動物公園見学記/犀の外皮皺襞の名称と区画/犀のプロポーションによる充実性/正倉院御物における斑犀・水犀・烏犀・白犀/犀に関する地名/水犀(鳥羽僧正・鳥獣戯画 第2巻『鳥獣写生巻』)
11.虎の美術
12.獅子の美術
獅子/ライオン頭首から獅子頭への変形/記憶にあるライオン・獅子関係・総メモ/ルーベンスのライオン/哺乳類の旋毛表現の作例
13.駱駝と美術 序/駱駝の動物学的解説/我が国と駱駝/作例解説
14.牛の美術
彫像における方位の同存化表現/側面性牛頭首と前面性両角と側面性耳介の関係を示す諸作例/側面性牛頭首における両角と耳介との相関関係について
15.馬の美術
馬のプロポーション/馬のムーブメント―ポーズ可能のリミット/蹄の表現様式について/馬の顔面の顎円線の問題/馬の外貌に おける下顎枝外側外表形の問題 附・パルテノンの馬の二重瞼/馬の顔面/馬・人の頭首側面よりのデフォルマシオン/パルテノンの馬首
16.狐と狸 狐と狸/狐:狸
17.熊の形体の擬人化表現
18.養源院・杉戸絵の怪獣,その名称の考証
19.絵画における竜の大開口形状についての論究
20.能楽と動物
21.十二支 十二支の動物相の考察/十二支圏動物考/十二支動物は何処の国で定められたか
22.鳥獣戯画 鳥獣戯画の特異性について/鳥獣戯画の蛙の顔について/鳥獣戯画の中の兎

西田正秋略歴
上下巻索引