『医療実践方法を論理の学に(1)』―研修医に理論的見方・考え方を語る

聖瞳子・高遠雅志・九條静・北條亮 著

本書は日々医療現場で奮闘している初期研修医の方々に、医師としての実力をしっかりつけてもらいたい、との願いを込めて書かれたものである。
初期研修医向けの本はこれまでも数多く出版されてきているが、従来のものは研修医として身につけるべき手技や注意点などを、ハウツウ的に解説するものばかりであった。確かにそのような知識やノウハウも大切であるが、それら従来の本には残念ながら最も肝心なことが抜け落ちていた。
その肝心なこととは何かといえば、医師としてどのような患者を診療する場合にも、常にその判断の拠り所となって正しい考えへと導いてくれる“確固たる指針”である。
この指針が頭の中に把持されていないと、必ずしも教科書的な症候の患者ばかりでない現実の診療の場で、ときとして誤診などのミスを犯しかねない。本書は、おもに初期研修医の方を対象に、その指針となる“理論”を説く書である。
学的レベルの《病気の一般論》を核とした、科学的医学体系に基づくその理論をわかりやすく説くために、本書では実際に初期研修医が診療のなかで経験した症例を挙げて、指導医と研修医によるリアルな対話形式で論が展開されていく。
医師の実力とは本来、単に知識や経験の量だけでなく、指針となる理論を実践に活かせる技量によっても評価されるべきものである。
実力ある 医師をめざす初期研修医の方々に、本書で是非その理論を学んで欲しい。

■現代社白鳳選書
【第1巻】  第1版/2016年/240頁/定価 2,000円 (税別)
四六判/ISBN 978-4-87474-173-3

目次

推薦の言葉  瀬江千史
推薦の辞    小田康友

■序 章 医師としての実力をつけるための初期研修医の学びとは

第1節  初期研修医の学びの現状と問題点
第2節  医師としての実力とはどういうものか
第3節  医師としての実力はどのようにしたらつくのか
―科学的理論の必要性
第4節  科学的医学体系に基づく実践方法論とは
―病気の一般論から捉える
第5節  医師としての実力をつけるための本来の学びとは
―考え方の道筋を示す

■第1章 2型糖尿病の一例

第1節  理論的な実践方法論によって解明できた典型的症例
(1) 糖尿病においてキーワードとされる 「インスリン抵抗性」
(2) カンファレンスで提示された症例の事実
(3) 糖尿病の病態についての現在の定説
第2節  医師としてのアタマの働かせ方とは
―診断・治療のための道筋を理解しよう
第3節  糖代謝を中心とした正常な生理構造を把握しよう
(1) 血糖値が一定であることの意味
―内部環境の恒常性を維持することの一環である
(2) インスリン分泌能解明の鍵はその民族の歴史にある
第4節  外界との相互浸透によって糖尿病へ至る過程を見る
(1) 摂取する食物の違いによる生理構造の変化
(2) 生命の歴史を辿って 「インスリン抵抗性」 とは何かを説く
第5節  糖尿病とはいかなる病態か
第6節  本症例のまとめ
―病気の一般論をふまえてこそ糖尿病の実態を捉えられる

■第2章 繰り返す消化性潰瘍の一例

第1節  患者の質問から研修医が問題意識を持った症例
(1) カンファレンスで提示された症例の事実
(2) 消化性潰瘍の病態と治療についての現在の定説
(3) 定説だけでは患者の疑問に答えられない
(4) 研修医が患者の生活歴を中心に問診して分かった事実
第2節  患者を診断・治療するための導きの糸
―診断・治療のための道筋を理解しよう
第3節  胃酸が分泌される必要性を生命の歴史から捉える
(1) 消化において胃酸が分泌される必要性とは
(2) いわゆる 「バランス説」 に抜け落ちている点とは何か
第4節  患者が消化性潰瘍へと至る過程を具体的に見ていこう
(1) 健康な生活時における胃酸分泌と胃粘膜の防御機構
―正常な生理構造の状態
(2) 患者の偏食や回復過程の不足が生理構造を歪ませる
―正常な生理構造が歪んでいく過程
第5節  消化性潰瘍におけるストレスの影響について
第6節  本症例のまとめ
―消化性潰瘍の再発理由も病気の一般論から解明できる

■第3章 股関節痛を繰り返す一例

第1節  診断基準に合致せず研修医が診断に困った症例
(1) 症例の提示と診断基準をふまえての研修医の疑問
(2) 股関節痛が生じるまでの患者の事実
第2節  医師としてのアタマの働かせ方とは
―診断・治療のための道筋を理解しよう
第3節  関節の正常な生理構造を生命の歴史から捉える
(1) 関節は硬質性と柔軟性を統一するための構造である
(2) 関節の正常な生理構造が維持される過程的構造
第4節  股関節痛が生じるようになった過程を見ていこう
(1) 偏った運動のあり方が関節の生理構造を歪ませる
(2) 回復過程が不足すると関節の生理構造が歪んでいく
第5節  病気へ至る過程の解明が股関節痛の治療方針を導く
第6節  本症例のまとめ
―病気の一般論をふまえて診断することが重要である

■第4章 右不全麻痺を呈した脳梗塞の一例

第1節  治療の過程を見るために脳梗塞の症例を取りあげる
(1) カンファレンスで提示された症例の事実
(2) 脳梗塞患者の麻痺が見違えるように回復した事実
(3) 患者が脳梗塞になるまでの経過と退院後の経過の事実
第2節  病気の一般論から脳梗塞の発症経過を見ていこう
第3節  人間の脳の正常な生理構造を捉える
第4節  昼間と夜間の生理構造の違いから歪む過程を捉える
第5節  麻痺が驚異的に回復した過程を説く
―脳とは何かをふまえたリハビリの実践
第6節  本症例のまとめ
―生理構造が歪む過程を捉えてこそ治療方針が導ける

■第5章 造影剤によるショックの一例

第1節  研修医が患者急変時の内部構造の変化を学んだ症例
(1) 患者の急変に遭遇した研修医の対応
(2) 患者の造影剤によるショックの状態と現在の定説
第2節  医師としてのアタマの働かせ方とは
―診断・治療のための道筋を理解しよう
第3節  造影剤投与時の正常な生理構造の変化を把握しよう
第4節  造影剤投与によって患者の生理構造が歪む過程を見る
(1) 造影剤投与時までの患者の病歴と生活過程を把握する
(2) 患者の病歴と生活過程から生理構造の変化を捉える
(3) 造影剤を投与してからショックに至った過程的構造
第5節  本症例のまとめ
―病気の一般論から体の内部の変化をアタマに描こう

■第6章 研修医の質問に答える

第1節  表象レベルで描いた医学体系の全体像についての質問
第2節  医学体系の全体像は考え方の道筋を示す
第3節  脳梗塞の症例を例に医学体系の全体像の使い方を説く
第4節  対症療法だけでは体全体の状態は正常に戻っていない
第5節  根本的治療には患者の個性的過程を見る必要がある
第6節  体の内部構造に分け入って病気に至る過程を捉えよう
第7節  生理構造が歪む過程を捉えてこそ治療指針が導ける
第8節  病気の一般論から身近な病気を見ていく訓練をしよう