『 医学教育 概論 (6) 』―医学生・看護学生に学び方を語る
瀨江千史/本田克也/小田康友/菅野幸子 著
医師や看護師の仕事は、人間の生命を預かり、守る、やりがいのある、誇りをもてる仕事であるが、最近の医療界は医療ミスが続出し、厳しい状況にある。
そのようなミスを犯さない、実力のある医師になるには、どうしたらいいのか?
本書では、医学生が大学での6年間、それぞれの授業や実習に、どういう観点から、どのように取り組んでいったら、医師としての実力をつけることができるのか、さらには日々の学生生活をどのように過ごしたら、 医師としての素質を養うことができるのかが、わかりやすく説かれている。
本講座が医学生に向けて説く内容は、 論理的には看護学生にもそのままあてはまるので、医師を看護師に、医療実践を看護実践におきかえて学ぶことができる。
【第6巻】
■ 現代社白鳳選書 43
■第1版/2015年/200頁
■定価 1,800円 (税別)/ 四六判/ISBN 978-4-87474-172-6
目次
第36課 文化遺産の論理化とは何か ――「CKD(慢性腎臓病)」 を例に説く
(1) 医学生は社会的に鍛えられる過程が必要である
(2) 課外活動は医学生の社会的訓練の場としても設定し得る
(3) 論理能力養成のための教育過程が大学からも失われた
(4) 「CKD(慢性腎臓病)」 を例に文化遺産の論理化とは何かを説く
(5) CKDの定義は腎臓病診療現場の切実な必要性から導入された
(6) 医学生・医師を混乱させていた複雑な腎臓病の分類
(7) 病気の進行が現象しづらく診断・治療が後手に回りがちな腎臓病
(8) CKDは腎臓専門医と一般医の連携を深め、診療上の成果をもたらした
第37課 「CKD(慢性腎臓病)」 の定義導入の医学教育論上の意義を説く
(1) 東京大学 「秋入学制度」 提言の背景
(2) 秋入学制度は大学教育の根本的な転換を意図している
(3) 秋入学制度による社会的混乱と成果の乏しさを指摘する反対意見
(4) 東京大学が受験秀才の欠陥を指摘した歴史的転換点
(5) 目的意識を学生の自主性に任せる秋入学制度の致命的欠陥
(6) CKDに関わる事実には医学教育改革の停滞を打破する鍵がある
(7) 病名創出の歴史的発展過程には二段階ある
(8) CKDの導入は本物の 「コア・カリキュラム」 策定への萌芽形態を示した
第38課 大学教育における一般教養の重要性を説く
(1) 学校教育におけるリーダー育成教育の消滅 ――等身大の思想の蔓延
(2) 日本の発展を担う人材育成のための大学の初期教育の重要性
(3) 学生に使命を自覚させ大志を萌芽させることが大学教育の出発点である
(4) 壊滅状態にある大学の一般教養教育の再構築が急務である
(5) 一般教養の必要性を提言しながら学びの指針を示せない日本学術会議
(6) 近代的一般教養の原点は18世紀ドイツの大学哲学部の教育にある
(7) 大学の一般教養教育は世界の論理的な全体像をイキイキと描かせることにある
(8) 『学生に与う』 (河合栄治郎) に見る教育者としての思想性の高み
(9) 『学生に与う』 は大学における一般教養教育を見事に示す
第39課 事実から論理を導きだすプロセスを 「腎臓とは何か」 を例に説く
(1) 医学教育改革の根源的問題は文化遺産の膨大化にある
(2) 「CKD(慢性腎臓病)」 の導入の意義と限界
(3) 「腎臓病とは何か」 を問うためには、腎臓の事実を知らなければならない
(4) 腎臓の事実である 「濾過、再吸収・排泄」 を貫く論理は 「選別」 である
(5) 論理とはすべての事実に一本の筋を貫き通したものである
(6) 科学的医学体系はすべての対象的事実の論理化によって構築される
第40課 「腎臓病とは何か」 を理論的に導きだす過程
(1) 腎臓の論理とは 「腎臓とは何か」 を一言で表現したものである
(2) 個々の知識の学びに先立つ全体像の重要性を説く実験
(3) 対象の全体像のイメージを描くことにより知識の学びに筋道ができる
(4) 病気の一般論と腎臓の論理から 「腎臓病とは何か」 の一般論を導く
(5) 腎臓病とは体内の必要物質と不要物質の選別に歪みをきたした状態である
(6) 人間を貫く三重構造をふまえて選別器官分化への必然性を説く
(7) 人間の認識に基づく生活が腎臓の生理構造を歪める過程的構造
第41課 論理的に整序されない腎臓病の教科書の実態を検証する
(1) 腎臓病の論理を導いてきた過程を概括する
(2) 人間を貫く三重構造によって腎臓病に至る過程的構造の理解を深める
(3) 代表的教科書 『内科学』 における腎臓病の目次を見る
(4) 『内科学』 の目次から腎臓病の全体像を描くことは不可能である
(5) 論理的に整序されていない腎臓病の病名
(6) 病気の一般論を導きの糸とした腎臓病の学びとは
第42課 腎臓病の論理に導かれた学びとはいかなるものかを説く
(1) 腎臓病の論理が医師の実践、医学生の学習の導きの糸となる
(2) 腎臓病は論理的には一つである ――完成形態は 「腎不全」 である
(3) 選別器官である腎臓の正常な生理構造
(4) 腎臓病の完成形態を通して腎臓が病むとはいかなることかを理解する
(5) 腎臓の生理構造の歪みが機能レベルから実体レベルへと至る過程的構造
(6) 腎臓の生理構造にそって学べば個々の腎臓病も整序して理解できる
(7) 医療現場のニーズと乖離した学びを強いる医学教育の裏事情
第43課 医学教育を歪めている現在の医師国家試験の実態を説く
(1) 腎臓病は論理を導きの糸としてすっきりと整序できる
(2) 論理に導かれた学びを妨げる医師国家試験の問題
(3) 現在の医師国家試験の内容が医学教育を歪めている
(4) 人材育成教育を破壊した戦後の学制改革と医師国家試験の導入
(5) 資格試験としての質向上の努力が医師国家試験をモンスター化させた
(6) 医師国家試験が医学教育改革を形骸化させている現実
(7) 医師国家試験をゴールとして教育された医師の欠陥
(8) 科学的医学体系に基づく医学教育の理論が切望されている