『 病床の心理学 』

J.H.ヴァン・デン・ベルク 著  早坂泰次郎・上野矗 訳

患者の生活のなかで、もっとも接触が深く、このうえなく重要な意味を担っている看護婦は、<病める人> の存在に、どうアプローチしていけばよいのであろうか。

著者は流動そのものというべき人間の現象(病める人) を克明に描くことによって<病む> ことの意味を、そして <病む人> の時間的・空間的変容を見事にとらえ、しかも深くあたたかな洞察をくわえている。

著者は オランダの著名な 精神病理学者 であるが、著者の貴重な臨床体験とあたたかな人柄は、 <患者とともにいる看護婦> への、きびしいまでに具体的な助言となって結晶しており、本書ではさらに訳者二人の詳細な解説が加えられ、患者理解にこのうえない示唆を与えてくれる。

■ 現代社白鳳選書 11
■ 第1版/1975年/四六判/184頁
■ 定価 1,500円 (税別) ■ ISBN 978-4-87474-064-4

目次

1.病気であることの意味

・ある家庭の父親の報告
・将来と過去の変容
・世界の狭隘化とそのなかでのいろいろなものの呼びかけの発見
・スティブンスンの描いた病人
・重い病気の発見
・周囲との葛藤
・正当な保留と不当な保留
・病気や死を拒否する現代
・病気や死を拒否することの功罪
・やっかいな患者と心の準備のない見舞い客
・死についての沈黙
・人生の症状としての死
・病床における真理
・病気の母親
・ベッドとの葛藤
・からだ
・ささやかな贈物の主としての病気
・昇華か?

2.見舞い客への助言

・ふつうにふるまうこと
・自分の時間をかけること
・椅子にすわること
・患者が病気であるのを忘れないこと
・患者の病気を当然のことと性急に考えすぎないこと
・病気のからだに決して嫌悪感を示さないこと
・見舞い客は患者の病状の重さに関する話を避けてはならないこと
・患者の目の前で他人と患者の話をしないこと

3.病臥とそのさまざまな姿

・病臥
・眠り
・無意識の臥床と死の臥床

4.回復患者の病床

・健康な将来に向かって

5.患者と主治医

・患者と主治医との間に「壁」はない
・「感情的」接触と「認知的」接触
・違いの実例
・医師のアプローチ

6.終章

【 解 説 】

「病床の心理学」に寄せて(上野矗)

1.原著者の基本的姿勢にふれて
2.体験としての病気
3.人間関係としての看護
4.患者とのかかわり合いのただなかにある看護婦

看護と人間(早坂泰次郎)

1.患者のために看護があるのであって、
看護のために患者がいるのではないこと
2.看護にとって科学とは何か
3.客観的とはどういうことか
4.方法としての人間関係
5.悩むひと(patient)としてのナース