『武道哲学講義(第2巻)』

南郷継正 著

本書は、著者の『全集』に収載された「武道哲学講義」に、新たに手を加えて単行本化されたものである。
その内容は、未刊の『全集』第三巻「哲学・論理学への道」(著者の学的研鑽の終章となるべき内容を把持して発刊される予定)の素稿(study)としての実質を持つものである。
この『武道哲学講義』はこれまで著者が学者や研究者を目指す人達に行ってきた、学問レベルの哲学入門の講義の内容をまとめたもので、そのためはじめから書物としての体系的な完成を目指して書かれたものではないが、講義形式という構成は初学者にも読みやすく、体系的に書かれた書物とはまた違った形で、著者の武道哲学を学ぶことができる。
本物の学問への道を目指すのであれば、自分の専門分野についての修学だけでなく、あわせて弁証法の修得が必須であると著者は説き、そのための努力の方法が本書全体を通して 熱心に教授される。

■現代社白鳳選書 106
【第2巻】  第1版/2014年/240頁/定価 1,600円 (税別)
四六判/ISBN 978-4-87474-163-4

目次

◆ 第1部 世界歴史をふまえた国家学序説

第1章 自然の弁証法 (性) から社会の弁証法 (性) へ

(1) 「自然・社会・精神の一般的な運動に関する学問」 としての弁証法
(A) 歴史的地球の自然には二重構造がある
(B) 「世界歴史」 を理解する鍵は 「地球の歴史」 にあり
(C) 「自然・社会・精神」 の歴史性・構造性
(D) 弁証法の真の中身とは何か
(2) 弁証法でいう社会の発展の論理構造とは何か
(A) 自然の弁証法 (性) から社会の弁証法 (性)へ
(B) 「生命の歴史」 から視た生命発展の論理構造
(C) 人類の歴史は文化創造の移動によって発展した
(D) いわゆる発展史観なるものを説いたヘーゲルの 『歴史哲学』 とは
(E) 「人類の歴史」 と 「生命の歴史」 の区別と連関
(F) 自然と社会の生成発展は一般性レベルでは同じ論理構造を把持している

第2章 学問としての 「世界歴史」 とは何か

(1) 「世界歴史」 を理解できるには必須の前提がある
(A) 「世界歴史」 概念の学問的系譜
(a) わが師滝村隆一の説く世界歴史とは
(b) 大哲人ヘーゲルの説く世界歴史とは
(2) 弁証法的唯物論から説く 「世界歴史」
(A) ヘーゲルの 「世界歴史」 を学び損ねたマルクスの発展史観とは
(B) マルクスの 「世界歴史」 に主に学んだわが師滝村隆一の発展史観とは
(C) 弁証法的唯物論から説く本来の 「世界歴史」 とは
(D) 「世界歴史」 の過程的構造を説く

第3章 「国家の原基形態とは何か」 を大学新入生レベルで説く

(1) 国家論構築に必須なことは
(A) 唯物論的弁証法で筋を通した 「生命(イノチ)の歴史」
(B) 「国家学」 には自然から社会への究明が必須である
(C) 「国家学」 構築のためには国家存立の構造を視てとらなければならない
(D) 歴史的な大学者が説く 「国家とは何か」
(2) 生命の歴史から説く 「国家学」
(A) 哺乳類は群団でなければ生存できない
(B) 「サルからヒトへ」 で必須となっていく規範の形成
(C) 本能に基づく統括力と教育 (躾) に基づく統括力
(D) 国家の確立に 「政治」 は必然性である
(3) 学問体系としての 「国家学」 とは
(A) 国家の現実形態から 「政治とは何か」 を説く
(B) 国家とは社会 (共同体) の自立的実存形態である
(C) 国家は誕生の原基形態 (原始共同体) から説かないから虚構となる

◆ 第2部 『学問としての弁証法の復権』 ― 弁証法の学的復活を願って

第1章 弁証法の学びは学問の土台である

第1説 世界は変化発展している過程の複合体である
第2説 すべての専門分野に必要な学問としての弁証法
第3説 大秀才に視る弁証法の学びの失敗とは
第4説 「科学としての弁証法」 との出会い
第5説 弁証法の権威書はなぜ弁証法の学びに役に立たないのか

第2章 学問としての弁証法の歴史を問う

第1説 学問の体系化の歴史とは
(1) 学問の体系化はギリシャとゲルマンの二大分野にあり
(2) 大哲人ヘーゲルと独学者ディーツゲンの説く学問の体系化を視る
(3) ヘーゲルとディーツゲンを読み解くと
第2説 学問としての弁証法の歴史とは
(1) 学問には新・旧二つの弁証法の実力を必要とする
(2) 弁証法を否定したデカルトとは
(3) ギリシャ時代の弁証法の形成過程
(4) なぜデカルトは弁証法を捨て去ったのか
(5) 学問への道は弁証法の修得抜きでは成功できない

第3章 学問としての弁証法の学びに必須の認識論

第1説 認識論の究明は哲学の歴史とともに
(1) プラトン、アリストテレスからカント、ヘーゲルへの歴史
(2) 認識論はなぜ学問として完成しなかったのか
第2説 歴史上の哲学者による認識論の究明
(1) カントの 「二律背反」 と 「物自体論」 とは何か
(2) 「絶対精神」 に貫かれる大哲人ヘーゲルの本質は認識論である
(3) 『精神現象学 序論』 『哲学史』 『歴史哲学』 はなぜ認識論なのか
(4) ディーツゲン、フロイトと認識論の関わり
(5) 観念論と唯物論では 「認識とは何か」 が異なるのであろうか
第3説 学問として体系化された認識論の構造
(1) 認識論とは認識を探究し、体系化した学問である
(2) 認識の問題を認識論の三重構造から解く
(3) 大心理学者フロイトの後継者はなぜ駄目になっていったのか
(4) 認識の問題を解く認識論の実力と弁証法の実力

第4章 認識論から説く学問としての弁証法の歴史

第1説 認識論から説く自然・社会・精神とは何か
(1)「 認識とは何か」 をその形成過程から問う
(2) 弁証法で説く自然・社会・精神とは何か
第2説 弁証法の起源はギリシャ哲学 = 学問構築過程にあり
(1) 古代ギリシャの学者は必ず世界を丸ごと研究していた
(2) 本来 「哲学とは全世界を“総括”し、かつそれを体系的に“統括”する学」 である
(3) 弁証法の起源はギリシャ哲学 = 学問の構築過程にこそある
(4) 古代ギリシャにおける弁証法への発展とは
第3説 「弁証の方法」 から 「科学としての弁証法」 への発展
(1) 認識の発展から説く 「弁証の方法」 への弁証法的発展過程
(2) ヘーゲル弁証法はエンゲルスの手で 「法則的弁証法」 となる
(3) エンゲルスの弁証法の法則化から一般的概念規定への過程
(4) 弁証法の学問としての一般論とその構造論としての三法則
(5) 古代ギリシャの学者は精神の世界へは不可能であった
第4説 ギリシャ哲学者の弁証法的実力を問う
(1) ソクラテスの弁証法的実力の過大評価とは
(2) ゼノンは弁証法の見事な創始者である