『武道哲学講義(第1巻)』
南郷継正 著
本書は、著者の『全集』に収載された「武道哲学講義」に、新たに手を加えて単行本化されたものである。
その内容は、未刊の『全集』第三巻「哲学・論理学への道」(著者の学的研鑽の終章となるべき内容を把持して発刊される予定)の素稿(study)としての実質を持つものである。
この『武道哲学講義』はこれまで著者が学者や研究者を目指す人達に行ってきた、学問レベルの哲学入門の講義の内容をまとめたもので、そのためはじめから書物としての体系的な完成を目指して書かれたものではないが、講義形式という構成は初学者にも読みやすく、体系的に書かれた書物とはまた違った形で、著者の武道哲学を学ぶことができる。
本物の学問への道を目指すのであれば、自分の専門分野についての修学だけでなく、あわせて弁証法の修得が必須であると著者は説き、そのための努力の方法が本書全体を通して 熱心に教授される。
■現代社白鳳選書 105
【第1巻】 第1版/2013年/200頁/定価 1,600円 (税別)
四六判/ISBN 978-4-87474-157-3
目次
◆ 第1部 『武道哲学講義』 序説
第1章 現代にいたるまでの学問の歴史を俯瞰する
(1) 哲学、論理学は、学的レベルではまだ端緒についただけである
(2) 弁証法及び認識論も、唯物論レベルではいまだ完成途上である
(3) 弁証法はなぜ完成できていないのか
(4) 学問形成を示唆するエンゲルスの文言とは
(5) 弁証法を学として完成させるには、どのような理解が必要か
(6) 古代ギリシャの弁証の方法とは
(7) 中世における弁証法の学び方の失敗
(8) 古代ギリシャ以来の弁証法の内実を学ぶとはどういうことか
(9) 弁証法の発展過程から見てとれる弁証法の構造とは
(10) ヘーゲルは学問形成へ向けていかなる歩みをすべきであったか
(11) ヘーゲルの哲学に欠けているものとは何か
(12) ヘーゲルの流れを汲むエンゲルスの弁証法に欠けているものとは何か
第2章 ヘーゲル哲学を本物の学として完成させるために
(1) 『全集』 第三巻の目次を素稿 (study) で提示する
(2) 武道哲学を 「講義」 として説くゆえん
(3) 『武道の理論』 以来の武道・武術の理論の深化
(4) 武道空手の限界を打ち破るための弁証法との出会い
(5) 三浦つとむの書を役に立つ弁証法として読みとるとは
(6) ヨゼフ・ディーツゲンから学んだものとは何か
(7) 哲学の歴史を一身の上に繰り返すとはいかなることか
(8) 哲学の歴史を繰り返すことの意味を、私自身の歴史で説く
(9) 恩師滝村隆一を通して学んだこととは
(10) すべての出来事を二重性として捉えられることの根本的理由
(11) 世界歴史の本当の実態とは ―世界歴史の概念を説く
(12) 弁証法の学びを目的意識的に二重性で捉えることで深化させる
(13) 社会の発展をふまえて哲学の生成発展の流れを考える
第3章 本 『武道哲学講義』 の理解を深めるために
(1) 学構築に向けて、弁証法をどのようなレベルで捉えるべきか
A 哲学一般はヘーゲルとともに終結するということの学的意味
B 弁証法は哲学の生まれ変わりと信じて出立した私
(2) 弁証法の中身について、学問レベルでは人類史上誰も説けていない
(3) 『全集』 第二巻の 「読者からの感想」
A 「読者からの感想」 1
B 「読者からの感想」 2
C 「読者からの感想」 3
◆ 第2部 学問構築一般論
第1章 学の出立時におさえておくべきこと
(1) 世界は一体的全体から生成発展してきている重層的な過程の複合体である
(2) 学一般としての哲学が必須であるゆえんとは
(3) 学問レベルで論理の世界を説くことの困難さ
(4) 学問が体系化されるために必須の弁証法とはいかなる弁証法なのか
(5) 弁証法を捨てるとその人の学問はどのようになってしまうのか
(6) 学問形成のためには、弁証法を二重構造性で学ぶことが必須である
第2章 「学一般」 へのプロローグ
(1) 学問体系構築に必須の弁証法
(2) 学問としての 「哲学」 の概念を説く
(3) すべては一体的全体から生成発展しているという理解なしに体系化は不可能である
第3章 「学一般」 の全体像
(1) 「学一般」 の一般論
A 弁証法の成立過程から視えてくる弁証法の歴史性、構造性
B 弁証法の学び方を説く
a プラトンの説く哲学的問答法の実態とはいかなるものか
b 日常生活を弁証法的に生きるとはどういうことか
(2) 「学一般」 の構造論
A 自然の弁証法性から社会及び精神の弁証法性へ
a 自然の二重構造とは
b 自然と社会との相互規定的相互浸透
c 社会と精神との相互規定的相互浸透