『 「生命の歴史」誕生の論理学 (1)』―ダーウィン・オパーリン・ヘッケルの悲劇とは何か

浅野昌充・悠季真理 著

本書は、学問誌 『学城』(日本弁証法論理学研究会編/現代社刊)に連載された論文「『生命の歴史』の歴史」(浅野昌充著)を元にして、浅野昌充・悠季真理の両著者が共同して、大幅に加筆・改訂して成ったものである。
その論文「『生命の歴史』の歴史」は、著者らが所属する日本弁証法論理学研究会の研鑽成果を上梓した単行本『看護のための「いのちの歴史」の物語』(本田克也・加藤幸信・浅野昌充・神庭純子 著/現代社刊)の読者から要望があった「生命の歴史がどのようにして究明されてきたのか、その道程をぜひ知りたい」「そしてその学的研鑽の過程を学んで、自分も専門分野で歴史性を持ちたい」… 等々の声に応えるべく執筆されたのであるが、本書では更に内容が深化されて、「著者らの頭脳がどのようにして学的究明をなしうる頭脳へと発展できていったのか」という、一大現実の過程的構造の要因たるそこを理解してもらうべく、大改訂がなされている。

■現代社白鳳選書45

【第1巻】  第1版/2016年/224頁/定価 1,900円 (税別)
四六判/ISBN 978-4-87474-174-0

目次

●序 章 自然・社会・精神の弁証法性を捉える真の弁証法的実力とは

第1節  生命の歴史究明の過程は学問力の養成と不可分・一体であった
第2節  弁証法は人類史上どのような歴史性として誕生させられたのか
第3節  弁証法の生生・生成発展の実相を視てとるには
第4節  「生命の歴史」 構築の歴史に視る学的実力の黎明期
第5節  唯物論的弁証法から導かれる新ビッグバン説を提唱する
第6節  カント、ヘーゲル的弁証法のレベル、そして南郷継正的弁証法のレベルへ
第7節  生命の歴史究明は自らの頭脳が学問の歴史を辿り返すことにある

●第1章 ダーウィン進化論が 「生命の歴史 (生命史観)」 構築に果たした役割

第1節  「生物の歴史」 が 「生命の歴史」 への一大契機となったダーウィン説
第2節  ダーウィンは本当に 「進化論」 を説いているのか
第3節  『種の起原』 が 「進化論」 の原典に祭り上げられたのはなぜか
第4節  「ダーウィン」 が抱えた根本的問題 = ミッシング・リンクの謎
第5節  ダーウィン進化論の克服を通しての 「生命の歴史」 の黎明
第6節  ダーウィンの限界を超えたのは唯物論的弁証法の学的実力である

●第2章 『生命の起原』 (オパーリン) の克服によって捉えられた生命誕生の実相

第1節  生命の歴史には本物の地球の歴史が必須であると分かった過程
第2節  オパーリンははたして生命の起源を解いたといえるのか
第3節  オパーリン説はどうして定説に祭り上げられたままなのか
第4節  観念論的生命論に陥らざるをえなかったオパーリン説の欠陥
第5節  非生命体から生命体への転化過程はどのように始まったのか
(1) 「生命とは何か」 を生物体全体の機能として理解する
(2) 太陽・月・地球の三者関係に着目することで視えてきた生命体誕生の必然性
(3) 水の起源と生命体 (=代謝的物質運動・変化) の生生・生成過程
第6節  オパーリンを超えていくための学的弁証法の実力とは

●第3章 「個体発生は系統発生を繰り返す」 (ヘッケル) との学説が問いかけたもの (1)

第1節  学問としての唯物論・弁証法についてのプロローグ
(1) 生命の本質と起源解明のために必須の概念
(2) 世界観としての唯物論と弁証法の関係
(3) 弁証法的唯物論と唯物論的弁証法が出てくる歴史的経緯を説く
(4) オパーリンの弁証法的実力を問う
(5) 生命の歴史を再措定するには学的二大概念の理解が必須である
(6) ヘッケルの 「一元哲学」 とは次元を異にする我々の 「生命の歴史」 措定の論理
第2節  「個体発生は系統発生を繰り返す」 (ヘッケル) との学説の生物学史上の意義
第3節  ヘッケルの学説はなぜ、学界から放逐されたのか ―ヘッケルの論理のレベル
第4節  ヘッケルはなぜヘーゲルの弁証法の内実を学びとれなかったのか

●第4章 「個体発生は系統発生を繰り返す」 (ヘッケル) との学説が問いかけたもの (2)

第1節  学問構築のために必然性レベルで努力すべきことを問う
(1) 学問構築への第一歩とは、まともなる事実の収集である
(2) ヘッケルの唯物論は唯物論 (タダモノロン) である
(3) 学問とは何かをふまえて説く唯物論とは
(4) 学問としての考える力とはいかなるものか
(5) 学的弁証法の修得なしには、実体とその現象形態の区別もなしえない
第2節  ヘッケルの定義の学的再措定は 「生命の歴史」 の王道を切り拓く
(1) ヘッケルの説を弁証法的唯物論から捉え返していくことの重要性
(2) 唯物論としての物一般の生生・生成発展とは
(3) ヘーゲルの学的弁証法を理解できないことからくる自然科学研究の欠陥
(4) 我々はなぜ自然科学研究の限界を超えることができたのか
第3節  真説 「個体発生は系統発生を繰り返す」 とは
(1) ヘッケルが説けなかった 「個体発生は系統発生を繰り返す」 の本当の意味とは
(2) 地球の発展の中での生命体の発展の構造とは
(3) 「個体発生」 の内に視てとれる過程的構造
第4節  遺伝性に関わる構造性の起源 ―生命体が地球から自立する過程
(1) 遺伝子の実体は地球の情報を組み込みながら変化していく
(2) 遺伝子実体の構造は生命の歴史で重層的に創られてくる

●第5章 人類の起源 (1) ―「考えて行動する」 動物 = ヒトはいかにして生まれたのか

第1節  人類の起源を解明するための大前提
(1) 従来の自然科学研究者の学的不成功の真因とは
(2) サルと人間の頭脳の働き、認識の違いを説く
(3) 人間特有の頭脳活動 (認識) を理解せずに学問的認識は理解できない
(4) 学的レベルでの学び (修学) は、人類の文化的営為の歴史を一身で辿ることである
第2節  人類の起源についての問題の焦点
(1) 現象レベルの把握に終始している人類学研究の限界
(2) サルからヒトへの過程を学問的に解明するには
(3) 「学問的に考える」 認識を創ることの大いなる困難性
(4) ポルトマンも説けなかった動物と人間の像形成機能の異質性とは