『KOMI理論』―看護とは何か、介護とは何か

金井一薫 著 本書は、著者の長年にわたるナイチンゲール思想の研究を基盤に構築された看護や介護における 「ケアの原理論」 ともいうべき 「KOMI 理論」 の集大成である。 その理論は、看護と福祉の連携のあり方を模索するわが国において、いずれの職種でも活用可能な ケアの根底に存在する原理を ナイチンゲールの思想の中から導き出し、看護・介護の実践に展開できるよう構築された、まさに実践のためのケアの原理論である。 いうまでもなく、優れたケアの実践には、それが看護職であっても介護職であっても、必ず 「看護とは何か」「介護とは何か」 という 「ケアの原理」が不可欠であり、本書ではその本質と原理とを、看護と介護が共有する 「ケアの視点」から提示して、かつ実践できるように構成されている。 すでに 「KOMI理論」 とその理論展開の道具としての 「KOMIチャートシステム」 は、日本全国の多くの看護臨床と介護臨床の現場において活用されているが、その理論の全体像が より詳細に著された本書の刊行により、今後ますます 「KOMI理論」 の確かな活用が促進されるであろう。 ■ 第1版/2004年/B5判/168頁 ■ 定価 2,000円 (税別) ■ ISBN 978-4-87474-114-6

目次

■ はじめに ■ 序章 KOMI理論に流れる思想特性 1.ナイチンゲール思想を基盤とする“現代ケア論” 2.看護と福祉は同根の歴史と思想を持つという視点 3.看護・介護実践における各々の独自性の明確化 4.看護と介護の連携と統合をうながす実践方法論の共有化 5.看護・介護実践を支える科学的思考の重視 ―技術の根拠を求めて ■ 第1章 ナイチンゲール思想の真髄と全体像 1.ナイチンゲールの看護観 2.ナイチンゲールの生命観と疾病観 3.ナイチンゲールの健康観 ■ 第2章 KOMI理論における目的論 1.ナイチンゲール看護思想が介護思想にもなる理由 2.看護・介護に共通する「ケアの目的」と定義 3.ケアの5つのものさし ■ 第3章 KOMI理論における疾病論・総論 1.医学の視点でなく、看護・介護の視点で病気を見つめる 2.ケアの視点で病気を見つめるための「思考過程」 ■ 第4章 KOMI理論における対象論 1.対象の見つめ方・その1 ―人間は「生命過程」と「認識過程」を持つ存在である 2.対象の見つめ方・その2 ―「生命過程」を支える「生活過程」のあり方 3.対象の見つめ方・その3 ―「生活過程」は「認識過程」によって創られ、 「認識過程」は「生活過程」を通して変化する 4.対象の見つめ方・その4 ―「社会過程」とのつながりを解く 5.対象の見つめ方・その5 ―「自然過程」(自然界)の諸要素を見つめ活用する 6.対象論を構成する5項目における各々の諸要素 7.対象論の全体像 ■ 第5章 KOMI理論における方法論 1.看護・介護における方法論の視点 2.「方法論の展開」を支える視点 ―「生活過程」の15項目を具体的に描く ■ 第6章 KOMI理論における教育論 ―専門性の確立と新しい看護・介護教育のあり方 1.ナイチンゲール方式に学ぶ「職業教育の原理」 2.現行看護・介護職養成カリキュラムから、看護および介護本来のあり方を描く 3.看護師教育と介護福祉士教育のあり方への提言 ■ 第7章 KOMI理論における組織・看護論 1.「三段重箱」の発想をもとに、看護・介護管理の臨床的構造を見る 2.管理の基本となるもの 3.管理者に求められるもの 4.組織・管理論における現代的課題 ■ 第8章 アメリカの諸看護論とナイチンゲール看護論との比較研究 1.アメリカの看護論の流れと日本の看護 2.看護の定義をめぐって 3.アメリカにおけるナイチンゲール看護思想の誤解とKOMI理論の優位性 ■ 第9章 日本で活用された代表的な「アメリカ看護論」と「KOMI理論」との比較研究 ―「ヘンダーソン看護論」と「オレム看護論」と「KOMI理論」 1.「ヘンダーソン看護論」の骨子と特徴 2.「オレム看護論」の骨子と特徴 3.「KOMI理論」との比較を通して ■ 第10章 日本における看護・介護論と「KOMI理論」との比較研究 1.日本における看護論の概要 2.『科学的看護論』と「KOMI理論」との比較 3.日本の介護論の概要と限界 ■ 第11章 看護・介護臨床における「KOMI理論」の活用実態と今後の課題 1.病院・施設における「KOMI理論」の活用実態 2.文献検索を通して「KOMI理論」を検証する 3.「KOMI理論学会」(第1回~第7回)集録を通しての考察 4.「KOMI理論」の今後の課題と展望 ■ おわりに 【資料】金井一薫著:ナイチンゲール関係邦文文献目録 【引用文献一覧】 【参考文献一覧】